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私信エビス

デルフト焼

デルフトでは夏の間の土曜日は町のあちこちでアンティークマーケットが開かれています。最近はマーケットに行っても欲しい!と思うものに出会えず、寂しいような、ほっとするような気持ちですが、今回は収穫物がありました。

デルフト

18世紀のデルフト焼大皿 (直径34cm)。縁には鮮やかな黄色が見られます。

V&A博物館で一回り小さい同時代のものを見たことがあったのです。古い大皿は手に入りにくくなっているので、これは掘り出し物でした! デルフト焼ではよく見られる花をモチーフとした模様は、一見クジャクに見えることから、ピーコック皿とも呼ばれています。

少しはがれた釉薬の下には荒々しい土が見えます。東インド会社を介して17世紀に大量に輸入された東洋磁器の白さと藍色への憧れから発達したデルフト焼は、磁器ではなく陶器。錫釉の白地にコバルトで染め付けを模倣したとのことです(現在の作品は錫釉を使っていないものが主流だとのこと) 。

長い冬が終わり、春の訪れを祝う日に商人や農民が家にある自慢の大皿を見せ合う行事が一昔のオランダであったそうですが、そんな日に使われたものでしょうか? そのうち、これを模倣した作品を制作してみたいなあ。

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デルフト

ロッテルダムからすぐのデルフトにも久々に足を運びました。デルフトというと、真っ先にフェルメールの答えが返ってきそうですが、同時代のピーテル・デ・ホーホが描いたデルフトの普段着の情景もとても魅力的です。

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「デルフトの中庭」 (1658年頃) ナショナルギャラリー

中庭右に見える木枠はゴミ箱かな? 手前には大根に似た葉が地面から伸びています。
デルフトは本当に絵画の雰囲気をよく残した町で、ホテルの部屋から中庭を見下ろし、こんな光景が覗けるのではないかと錯覚をおこしてしまいました。

ホテルは、やはり17世紀の画家ヤン・ステーンが借りていたこともあるデルフト最古の運河に面した建物でした。ステーンの描いたデルフトの景色は、下の「クロエサーと娘カトリーナの肖像」(1655 オランダ国立博物館)に見られます。

503px-Jan_Steen_-_Adolf_en_Catharina_Croeser_aan_de_Oude_Delft_1655-1.jpg

塔は今もそびえる旧教会のもの。教会を背にして少し運河沿いを歩くとホテルでしたので、画家は中央男性とその娘のご近所さんだったということになります。

この絵、つい数年前まで「市長と娘の肖像」として知られていましたが、実際のところ男性はステーンの経営する醸造所と取引のある雑穀商人だった模様。しかし、どうして物乞いに対しての冷淡な振る舞いをわざわざ描いたのでしょう?

一つでない答えを色々と考えてみるのが好きです。

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光の帝国

今回ベルギーは素通りする予定でしたが、数年前に開館したルネ・マグリット美術館にまだ行っていなかったので、立ち寄ってきました。以前は、王立美術館の中に彼の展示部屋があったのですが、お隣に独立したのですね。

子供の頃、MOEという雑誌を毎月買ってもらっていて、そこでのマグリット特集が私の画家との出会いです。まだ時代は昭和、毎号本屋から届けられるMOEの美しい紙面は、子供の心を長時間虜にしました。MOEは今年、400号発行を迎えたということです。

さて、マグリット美術館は、画家の生涯と時代を知るには良かったのですが、肝心のマグリットの作品はあまり多くなく、視覚的には欲求不満が残りました。個人蔵の水彩画は興味深かったけれども。

見所は、最後に並んで展示された制作年代の違う2点の「光の帝国」。

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1954年制作の一番著名な「光の帝国」

下が、1960年代制作のもの。
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私としては、初めて目にする後者が断然好みでした。水の反射もなく無駄なものを省いて、空と闇との対比が深まっていると思います。控えめな街頭の色に木々の存在感がよりいっそう増していました。

「光の帝国」シリーズは他作品もまだあるとのことなので、NYグッゲンハイム美術館蔵の作品もあげておきます。
The_Empire_of_Light_Guggenheim.jpg

しかし、昔から私にはこの作品は別にシュールな世界にはどうしても見えないのです。夕刻ってこれが普通でしょ!?と今でも信じているのですが。

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ロッテルダムポートデイ

欧州最大の港、オランダロッテルダムのみなとまつりに行ってきました!

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前日にライン河上から見た停泊中のオランダ海軍哨戒艦艇、フリースラントFrisland P842。折り紙のような鋭角のすっきりとしたデザインが美しい・・・ 隣にはゲストとして、もっさりしたイギリス海軍掃海艇、HMS Brocklesbyが並んでいました。

フリースラントは最近就役したばかりとあって、どこもかしこもピカピカでした。クルーは50人弱の少数精鋭。海賊対策にカリブ海から帰って来、次はロシアへ合同訓練に向かう予定とのこと。カリブの海は良かったよ、と。皆さん気さくで、流暢な英語を話します。

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ブリッジ後方からヘリ甲板を見下ろしたところ。ヘリは甲板に一機を待機させて、二機搭載を心がけているそうです。ヘリ甲板下に高速救難艇・要撃艇を搭載。艦前方甲板は立ち入り禁止でした。

お隣の潜水艦は、閉所恐怖症なのでパス。
後方に見えるのは、民間の浚渫船(しゅんせつせん)、2012年竣工のアルテミスという名前でした。

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31メートルの深さまで海底を浚うことができるそう。でかい!

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フリースラント搭載のNH90 NFHによる救難デモンストレーション! 2010年就役のNH90の海軍仕様。
日本もイギリスも所有しないヘリです。イタリア海軍はプロトタイプを持っているらしい。

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こんなケーブル橋、高層ビル、行き交う船、クレーンといった妨害物だらけの低空で、ホバリング、そして急上昇の後、あり得ない速度と角度で機首から急降下。日本では、市街地で絶対こんなことさせてもらえない!
さすが軍用機・・・・

ロッテルダムはちょっと横浜に似た街でした。完成間近の中央駅建物が外部も内部の空間も素晴らしかった。金沢駅と並ぶ名駅舎となりそうだな。

ロッテルダム中央駅
http://www.rotterdam.nl/rotterdamcentraal

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ケンジントン宮殿

学生時代から「履歴書に趣味は散歩とか書くなよ」と友達に念を押されていたほど私は散歩魔で、一日大体2時間は緑を求めてうろついています。
現在の住居は、ケンジントンガーデンとハイドパークの広大な緑のエリアから歩いて五分。間もなく、ウィリアム王子夫妻が赤ちゃんと戻って来るケンジントン宮殿からいつも散歩がスタートします。

ケン

ケンジントン宮殿とサンクン・ガーデン(沈む庭)。庭の周囲にはもうシクラメンが地面から芽を出し、花を咲かせ始めました。

ケンジントン宮殿と言えば、以前はチャールズ皇太子のお住まいでした。

大衆に人気のないチャールズ皇太子ですが、オックスフォードやケンブリッジでは評判が良かったです。有機農法や自然保護に力を入れているだけでなく、多文化の理解に勤めており、オックスフォード大学のイスラム研究所のパトロンとして講義をすることもありました。チベットの中国による武力支配に対して反対姿勢を積極的に貫いていることでも知られています。私のケンブリッジ奨学金も皇太子のチャリティからいただきました。皇太子が大学へいらして奨学生と対面の際は、民族衣装をできれば着て下さい、との申し出もありましたっけ。

オックスフォードの博物館でボタニック・アートの展覧会を企画していたときの話を学芸員から聞いたことがあります。チャールズ皇太子自身から、是非カタログに一筆書かせてくれとの思いがけない申し出があったということでした。自身も好きな分野であるから貢献したいのだと。執筆もお好きなようです。

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ハイドパークのサーペンタイン湖から対岸にケンジントン宮殿を臨む。

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